ご挨拶

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腎臓内科~一生と全身を診る内科~へようこそ

 徳島大学の大学院医歯薬学研究部腎臓内科学分野(腎臓内科)のホームページにようこそ。私はこの教室を主宰する脇野修です。このページにいらっしゃったということはとりあえず腎臓内科なるものに興味を持っていることと思います。皆さんの慧眼に感謝いたします。皆さんが今興味を持っている腎臓内科の魅力をお伝えします。

 
● 腎臓という臓器は奥深い

 腎臓というと尿を作る臓器でありますが、実に多種類の細胞が多くの働きをしています。心臓からの血流の20%が全体重の0.5%に過ぎない腎臓に流入しており、臓器当たりの血流量は人体で一番であります。この小さな臓器は多彩な働きをしています。酸、窒素化合物といった老廃物の排泄、水の排泄、電解質の再吸収、血圧、貧血の調節といった人体の内部環境の維持に関する働きをします。そして腎臓の異常は他臓器の働きに影響し、特に循環器への影響は大であります。これを臓器連関、心腎連関と言います(図1)。このように腎臓という臓器は機能が多彩で奥深いのであります。腎臓の働きを評価して、異常あれば治療するのが腎臓内科です。

 

● 腎臓内科の包括する分野は幅広い。患者さんの一生と全身を診る総合内科である。

 腎臓という臓器を中心にその機能の異常を診断し、治療する、また予防を行う。そして腎臓の機能が廃絶した患者さんの管理もする。腎臓内科は守備範囲が広い内科なのです。腎臓内科医の仕事は大きく4つあると私は考え、これをトータル・ネフロロジーと考えています(図2)。この4つは以下であります。

1.Conventional Nephrology:腎生検を行い治癒できる腎疾患を診断し、これに対応する医療
2.Consultation Nephrology:他科からのコンサルテーションに対応し、病院のあらゆる腎臓の問題に対応し、他科の治療、病院を支える医療
3.Preventive Nephrology:生活習慣病の管理を中心に、慢性腎臓病(CKD)のリスク因子管理を行う心血管事故予防・透析予防医療
4.Aging Nephrology:末期腎不全患者・透析患者の健康寿命増進のための医療

 腎臓病の予防医療から終末期医療まで患者さんの一生に寄り添い対応します。また、腎臓病以外の患者さんの腎臓の問題に対応するだけではなく透析患者や移植患者さんの全身管理にも携わるわけで、対応疾患も歯科治療から末期がん、心血管事故まで幅が広い科であります。総合力がモノをいう科であります。
 

● 外科的手技もあり、そこそこの忙しさ。そして年を取っても続けられます。

 近年内科も外科的手技が多彩になってきました。循環器内科、消化器内科を手技が大きな比重を占める科とすれば、糖尿病代謝科、リウマチ科などは手技の少ない科ではないでしょうか。そして腎臓内科は腎生検、そして透析医療として、腹膜透析カテーテル挿入、血液透析動静脈シャント形成術などの手技があり、内科医が外科的処置を行えます(図3)。これらは外科的手技ですから保険点数も高く、医療技術として価値の高いものであります。この程よい多忙さが医師として消耗することなく長くできるとともに充実感を感じられるということが腎臓内科の長所です。そして一線を退いても透析クリニックを開業したり、透析クリニックに勤めれば、定年に関係なく仕事を続けられます。


 

● 腎臓内科は社会的な使命が高い。特に徳島県では高い期待が持たれている。

 ご存じのように日本は世界に類のない高齢化社会であります。そして高齢化に伴い、透析導入患者は増加の一途をたどっています(図4)日本で透析にかかる医療費は、年間1兆6000億円に上ると推計されており、総医療費の4%を占めます。 少子高齢化が進む中で、透析患者が増え続ければ、社会保障の財政運営が一段と厳しくなる懸念もあります。


 この透析移行を阻止する腎臓内科医は高齢化社会で重要な立ち位置となります。腎臓内科専門医は将来必要な人材なのですが、全国的に充足されていません。将来、特に高齢化率の高くなる都道府県で必要となる人材となることは確実であります。実はその一つが徳島県であります。徳島県の県民あたりの透析専門医は日本でも高い水準ですが、腎臓専門医はその逆となっています(図5)。こうした県は日本で数多くあり、腎臓内科医の社会評価は高くなっていくと思われます。

 
● 腎臓内科は世界的にもunmet needsの高い領域である。

 日本は世界に冠たる透析技術を有しておりかつ国民皆保険ですべての末期腎不全患者は透析を保険診療で受けることができます。ところが、世界にはCKDの受診や透析を受けられない地域が多いのです(図6)。それらの国では特別な人でなければ、腎不全になると昔の日本のように死ぬしかないのです。そして日本の透析医療技術は世界中の腎不全患者を救う可能性を秘めています。海外特にアジアの途上国は生活水準がどんどん上がっていますから、透析の技術を広められるという可能性を秘めているといわれています。さらにCKDの治療薬は他の領域の治療薬と比べ少なく、CKD関連医療は典型的なunmet needsの高い、今後伸びる可能性のある医療領域なのであります。

 
 いかがでしょうか。皆さんのライフプラン、夢や希望にマッチしているのではないでしょうか。まとめると「適度に手技があり、適度に忙しく、患者とは最後まで全身を診て付き合える。今後社会的需要が増すが、絶対数が少ないので自己の存在価値を感じながら一生続けられる仕事。世界的にもunmet needsがあり望めば海外にも飛躍できる。」こんな素晴らしい科です。私はこうした腎臓内科の多様性を重視していますので各人の希望を優先できる科の運営をするつもりです。皆さんの目線で医局を運営したいと思っています。ぜひ当科の門をたたいてください。
 

お待ちしています。