ご紹介いただく先生方へ

2021年 06月 27日

・腎臓内科について

腎臓は生体の体液恒常性維持機構、老廃物の排泄、血圧の調節、骨代謝、貧血など多岐にわたって生体で重要な働きをします。腎臓病で重要な病態は腎機能低下をきたし、末期腎不全(透析)へ進展することです。全世界でこの末期腎不全になり、腎移植や透析療法などを必要とされる患者さんが急激に増えています。この腎不全の予備群として慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)が注目されています。高齢者では30~40%の方がCKDであり、その対策が全国規模で必要です。CKDは腎炎や糖尿病などいろいろな疾患でおこりますが、それら疾患に必要な特別な治療と共通の病態に対する治療とが必要です。またCKDは腎不全のみならず心血管病変の危険因子でもあります。
 腎臓内科では体液異常、原発性腎疾患(腎炎、ネフローゼ症候群など)、続発性腎疾患(糖尿病性腎症、膠原病などによる腎疾患など)および腎不全を対象として診療・研究・教育を行っています。腎臓内科の診療には大きく分けて2つの柱があります。一つはCKDの診断・治療であり、また難治性腎疾患に対する診断・治療があります。もう一つ重要な点は末期腎不全患者に対する透析医療です。また、腎臓は全身の恒常性維持機構として重要な働きをするのみならず全身疾患の一分症として腎障害が認められることより、当科では腎臓や透析医療の専門医のみならず総合内科の専門医も有し、全身のマネージメントを実施しています。 特に糖尿病性腎症は我が国における末期腎不全の最大の原因疾患であり、臨床では克服しなければならない最重要疾患です。当科における研究の課題はその糖尿病性腎症の病態解明と診断および治療法の開発です。世界へむけて発信できるよう糖尿病性腎症の全容解明を目指して立ち向かっております。当科では大学病院としての診療・研究に加え、専門医の育成を行い、地域医療の連携の構築を最重要課題として取り組んでおります。これら活動が若手の育成や我が国の医療の未来に貢献できるよう願っています。
 

・当科にて拝診する患者様の臨床像

 腎臓内科にご紹介いただきたい患者様の臨床像として、腎機能障害(eGFR低下、クレアチニン上昇)もしくは尿検査異常(尿潜血・蛋白陽性)の方があげられます。日本腎臓学会より紹介基準が提示されており、①アルブミン尿・蛋白尿が正常でも40歳未満はGFR値が60ml/分/1.73m²未満、②微量アルブミン尿・軽度蛋白尿の場合もGFR値60ml0/分/1.73m²未満、③血尿がある場合はGFR値にかかわらずご紹介ください。また、三か月以内に30%以上の腎機能の悪化を認める方や、高血圧に対する治療の見直しが必要なCKDの方、それ以外にも当科で診療している下記の疾患などで治療にお困りの場合は遠慮なくご相談ください。
 

・当科にて拝診する疾患

1.検尿異常:健康診断などで蛋白尿や血尿を指摘された場合です。必要に応じ、腎生検(通常5日間の入院)による正確な診断のもとで治療を行っていく必要があります。
2.慢性腎臓病(CKD):①0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)がある、もしくは、②糸球体濾過量(GFR)<60ml/分/1.73m2の①、②のいずれか、または両方が3か月以上持続することで診断します。腎炎や高血圧、糖尿病など多種多様な疾患が原因となり得るため、個々の病態に応じた治療選択が必要です。
3.糖尿病性腎症:糖尿病の細小血管合併症(腎症、網膜症、末梢神経障害)の1つです。基本的に神経、眼、腎臓の順番に障害が起き、腎症は糖尿病の罹患後10〜15年以上経過してから発症することが多いとされています。
4.ネフローゼ症候群:高度の尿蛋白および低アルブミン血症による浮腫、低栄養状態を起こします。腎生検による精査を行い、各疾患に適したステロイドや免疫抑制剤による治療を行います。
5.急速進行性糸球体腎炎:急速に進行する腎機能障害や血尿、高CRP血症を呈し、発熱、倦怠感、尿量低下、浮腫などの症状が出ます。早期に治療が行われない場合は急速に症状が進行し、不可逆的な腎不全へ至ってしまいます。
6.(常染色体優性)多発性嚢胞腎:腎臓に多数の嚢胞が出来、放置しておくと嚢胞がさらに大きくなり、腎機能障害が進行してしまいます。また肝臓などにも嚢胞を認め、その他にも脳動脈瘤や大腸憩室症、僧帽弁逆流症などの合併症があります。常染色体優性遺伝の場合は、患者から子どもに2分の1の確率で遺伝します。嚢胞の増大速度が速い方にはトルバプタンが適応されます。
7.尿路感染症:膀胱炎は無症状であれば経過観察します。有症状もしくは治療希望のある膀胱炎や、腎盂腎炎などに対しては抗生剤治療を行います。
8.高血圧:CKD患者の降圧目標は130/80mmHg未満であり、さらに尿蛋白が1g/day以上の場合には125/75mmHg未満が目標となっているため、厳格な血圧コントロールが必要です。また本態性高血圧だけでなく二次性高血圧についても精査・治療いたします。
9.高尿酸血症:最近の研究にてCKD発症リスクとの相関が示唆されており、尿酸値8.0-9.0mg/dl以上の場合は尿酸排泄促進薬もしくは産生抑制薬などによる治療を検討します。
10.透析導入:クレアチニン5mg/dl以上で透析の準備を始め、クレアチニン8mg/dl以上で透析を導入したほうがよいといわれています。腎代替療法には血液透析、腹膜透析、腎移植があり、患者様と相談して最適な治療を決定いたします。
11.入院中の腎代替療法:当院には血液透析室がございますので、血液透析が必要な方は他科入院であっても当院にて拝診することが可能です。腹膜透析についても、腎臓専門医・透析専門医が責任を持って対応いたします。
 

・当院にご紹介いただく際のお願い

緊急時を除き、原則として当日受付は行っておりませんので、恐れ入りますが事前にFAX予約 (連絡先0120-33-5979) をお願いします。徳島大学病院のホームページ(https://www.tokushima-hosp.jp/info/fax.html)から予約票をコピーしてお申し込みください。予約確定後、予約受付票にて予約日時を返信しますので、患者様に受診日時及び紹介状(その他必要物品)をもち受診していただくようにお伝えください。
 例外として緊急性の高い腎疾患の場合には当日中の対応を致しますので、遠慮なくご紹介ください。急性腎不全、高カリウム血症、ネフローゼ症候群、急速進行性糸球体腎炎、シャント狭窄または閉塞など緊急性が高いことが予想される場合、あるいは判断に悩まれる場合には、直接電話(内科外来の連絡先:088-633-7118))にてご相談いただけると幸いです。